美しい瞬間を生きる

向田 麻衣 著 森 旭彦 協力

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Summary

カトマンズ、東京、NY…世界を舞台にコスメで
女性の自立支援を行う注目の女性起業家・向田麻衣の生き方エッセイ。
恋も仕事も家族もぜんぶ大切に、自分の人生を自分らしく、
自由に生きたい! と思う人の背中を押す1冊。

Back Stage

向田麻衣という人と会ったのは、2009年のことだった。
会った場所は横浜の中華街。

僕は前職のエンタメ系雑誌の映画担当の仕事を辞めたところで、本当に100万円とMacしか持たずに上京したばかりだった。だから、自己紹介も、これ以外にあまり言うことはなかった。
それで面白かったのは、向こうも大体同じような状況だったということ。
ただ、僕は文章を書いて生きていくということを決めていて、あっちは「お化粧つかって、なんかやる」(当時の僕にはそれくらいしか理解できていなかった)だった。

それ以降、イベントで会ったり、いっしょに飲みに行ったり、彼女が僕の人生に登場することが多くなる。
お互いに、どうしたわけか、同級生の気持ちでいた(年齢は同じだ)。少なくとも僕はそうだった。時々電話で話して、お互いの今の様子を伝え合っていた。僕にとってそんな人は、東京でそんなに多くない。

でも電話の向こう、インターネットの向こうの彼女は、この本に書かれているとおり、東京にいるとは限らない。

今回の本を、いっしょにつくることになったのは、必然でもあったのかもしれない。
編集には、かつていっしょにお仕事をしたことのあった、徳瑠里香さんにお願いした。

最初は僕がインタビューをして、構成などでもサポートするつもりだった。
でも、どうもうまくいかなかった。
そして彼女が書き始めた。そこにあった奇跡は、ぜひ本書を読んでもらいたい。

この本づくりの前後で僕には大きな変化があった。それまでの僕は、どことなく、自分の100%を出して表現することばかりを考えていた。でもそれは少し違っていることに気づいた。

1冊の本は、作り手にも読み手にも、会ったことのない、何らかの自分に出会うための1冊であるはず。
そうした本を生み出すためには、その1冊を作るプロセスは、1冊ごとに常に異なる。むしろ「常に異なっている」ことをいかに期待するかにかかっている。本というものは、そこに形がある“モノ”であり、モノであるかぎり、それはひとつの現象なんだ。自分の100%だけに期待しているだけでは、そこまで辿りつけないことを知った。
当たり前のことに、どうしたわけか、気づくことができなくなっていた。
それを親友に気づかせてもらえたことは本当に大切な出来事だったと今は思う。

向田麻衣はよく、この本の「仕掛け人」として僕のことを紹介してくれる。0から1にしたのは僕だと言ってくれたこともある。
でも、僕はそうは思わない。この本を生み出したのは、あくまで向田麻衣であり、編集してくれた徳さんだ。僕はただ、となりで本気で素振りをしていただけだ。

お化粧の歴史やら、いろんなことを自分なりに調べた。インタビューのネタだ。いっしょにインタビューをしながら彼女の原稿を読んで、少しずつ形になっていくのを見ていた。
それはとても新鮮な気持ちだった。
本が生まれる時には、場合によっては、僕の得意な「書く」ということが邪魔になることもある。その時には自分の持ち場を少し変えるということも必要なことだ。今回の僕の持ち場は、いわば並走だった。

僕の言葉が何かしら文章を書くことに役立ったのなら、嬉しい限りだ。