アルスエレクトロニカ・レポート(1) AI時代に見つめるもうひとつの"I"

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インタビュー・執筆:

世界最大級のメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」が、オーストリアの都市・リンツで9月7日から11日にわたって開催された。今年のテーマは「Artificial Intelligence - The Other I(もうひとつの"I")」。人間の仕事を代替し、世界最強の囲碁棋士を打ち負かし、画家・レンブラントの“新作”すら描く――かつてはSFの存在であったAIは、デジタル・エイジに生きる私たちにとってはニュースの定番ネタになり、もはや“奇妙な隣人”だ。私たちは漠然とした期待と不安を抱きながら、見えず、触れることもできないが、社会の中で存在感を増す奇妙な隣人とともに生きている。世界中のアーティストたちがこの奇妙な時代へ投げかけた問いがどんなものであったのか、レポートする。


“私たちの人工知能に対するビジョンは、自分の完璧な似姿をもつものをつくりだしたい衝動と、それによっていつか破滅に追いやられるという恐怖が絡まり合うことで、他の技術に対する観念とは全く違うものになった。

そのため人工知能は、今日のデジタル・エイジにおける人間観と世界観を考える上で、最上の投影画面になったと言えるだろう。――ゲルフリート・ストッカー”

ウェブサイトに掲載されたアルスエレクトロニカの芸術監督ゲルフリート・ストッカーによるエッセイ「Artificial Intelligence - The Other I」の一節は、今回のフェスティバルテーマを端的に示している。AIを、まるで鏡を通して向き合う2つの像のような、もうひとつの「自分(I)」の似姿であり、さらに私たち人類とは他なる「知性(Intelligence)」として捉えてゆくことだと解釈できるだろう。...continue to read