WIRED: 未来の女性は、バクテリアを身にまとう

インタビュー・執筆:

バイオテクノロジーによって女性のウェルビーイングを実現する。それも「バクテリアを身にまとう」ことで──。それがイタリア出身のインタラクションデザイナー、ジュリア・トマゼッロが手がけるプロジェクト「Future Flora」である。バイオテクノロジーとヘルスケアの交差点から女性器の微生物叢にフォーカスすることで、彼女が描くまったく新しい未来の女性像とは。

WIRED: Future women wear bacteria

Achieving women's well-being through biotechnology. That's also by putting on bacteria. That is the project "Future Flora" that interaction designer Julia Tomasello from Italy works on. Focusing on the microbiota of female organs from the intersection of biotechnology and health care, what is the vision of a completely new future woman created by her?


notes:

WIRED.jpに、インタラクションデザイナー、ジュリア・トマゼッロ(Giulia Tomasello) へのインタビューが掲載されました。

ジュリアはアルスエレクトロニカの賞である「STARTS Prize」を2018年に受賞している。彼女のプロジェクト「Future Flora」テーマは、バイオテクノロジーと女性のヘルスケアを結びつけることで、この社会における女性の社会的認知を回復すること。

彼女と出会ったのは昨年9月のアルスエレクトロニカ・フェスティバル。この原稿はそこで行われたインタビューと、その後東京で再会し、スカイプ等で取材を重ねて書かれている。
ジュリアの思考を聞き、プロジェクトを見ていて何度も思う。デザイナーの意味することは、今大きく変わってきている。彼女は自身をインタラクションデザイナーと名乗るが、そのプロジェクトは、これまで結びついてこなかった要素や知識を結びつけ、それらを総動員することで生まれている。この原稿では、そういった仕事とは何かについても彼女に深く聞くことができた。

とくにヨーロッパやアメリカで、彼女のような、非常にイノベーティブな発想をするデザイナーに出会うことが多いが、そもそもデザイナーという職種の意味するものが、「社会における総合的な問題提起・解決を行う人」へと明確に位置づけられてきていることを感じる。正しくは、デザイナーというものが指す総体の中で、そうした新しいデザイナー像が、1つのジャンルとして明確に意義をもって立ち上がっているということになるのかもしれない。

そうしたデザイナーは、いわゆる「STEAM分野」つまり 〈Science(科学), Technology(テクノロジー), Engineering(工学), Art(芸術), Mathematics(数学)〉の知識を用いて、この社会における問題、あるいは「考えなければならない問題」を発見し、その解決策を提示するというスタイルをとる。
もっともそのような潮流はイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで「イノベーション・デザイン・エンジニアリング学科」(できた1980年当時はインダストリアルデザイン・エンジニアリング学科)が誕生し(あるいはIDEOやMIT Media Labなどの文脈もある)、数々のイノベーターを生み出していった時から現在に至るまでに長い流れがあり、ある日突然生まれたものではない。
そして、デザインに関わる人が、デザインが学問において高位のものとして扱われてこなかった歴史について疑問と葛藤を持っている、ということも先日とある人にお話を聞く機会があった。

そんな背景もあり、ジュリアのプロジェクトにはずっと関心を持っていた。こうして、自分にとっていつも非常に刺激的で、人生を大きく変えてくれたWIREDというメディアで彼女のことを紹介できることを本当に嬉しく思っています。Matsushima Michiakiさん、本当にありがとうございます。

そして男性と女性の差異を超えて、非常にプライベートなことも含め、話してくれたジュリアに、深い感謝を。ずっとサイエンスやテクノロジーに魅せられてきたひとりのライターであり、男性である自分が、うまく伝えられていることを心から願っています。

Giulia Tomasello Thanks a lot for your cooperation, my friend. I'm a one of the greatest fan of your project. I truly hope this article would be a help to achieve your future success. See you soon in London or somewhere in the world!

MEDIA森 旭彦WIRED