SENSORS: 企業とイノベーションの「今」を読み解き、未来をつくる、デザインの視点【RCA-IIS Tokyo Design Lab マイルス ペニントン教授インタビュー】

インタビュー・執筆:

東京大学生産技術研究所(IIS)、英国の王立美術大学Royal College of Art(RCA)、博報堂ブランド・イノベーションデザイン、株式会社SEEDATAの四者は2018年6月から、デザイン・リサーチ・プロジェクト「Foresight Project "Future of Luxury"」をスタートさせています。 

2016年末に東京大学生産技術研究所(IIS)とRCAが共同で立ち上げた、RCA-IIS Tokyo Design Labでは、デザインの力で、最先端のテクノロジーを社会に実装可能なイノベーションとして展開することを目指して活動してきました。 

本プロジェクトでは、東京大学生産技術研究所が持つ先端技術研究と、数々のイノベーションを創出してきたRCAのメソッドによってアイデア開発を行います。そして、博報堂・SEEDATAによる生活者発想・未来発想を起点としながら、デザイン思考のプロトタイピング力で新しい未来像を描き出すことを目的としています。

今回は、長年RCAで学科長として教鞭を執り、2017年9月から東京大学生産技術研究所に教授として着任した、マイルス ペニントン教授にこのプロジェクトへの思い、未来における企業とデザインの関わり方について聞きました。

SENSORS: RCA-IIS Tokyo Design Lab Interview with Professor Miles Pennington

Production Research Institute of the University of Tokyo (IIS), Royal College of Art (RCA) in the UK, Hakuhodo Brand Innovation Design, Inc. SEEDATA Inc. from June 2018, Design Research Project "Foresight Project We have launched "Future of Luxury". The RCA-IIS Tokyo Design Lab, jointly launched by the University of Tokyo at the end of 2016 with the Institute of Industrial Science and Technology (IIS) and RCA, uses design power to deploy cutting-edge technology as an innovation that can be implemented in society We have been working to achieve it. In this project, ideas will be developed by the advanced technology research possessed by the University of Tokyo Production Research Institute and the RCA method that has created numerous innovations. And while aiming to create a new image of the future with prototyping power of design thinking, with Hakuhodo and SEEDATA as the starting point of the consumer idea and future idea.

This time, Prof. Miles Pennington, who has been teaching at the RCA for many years as a course director and has been appointed as a professor at the University of Tokyo Production Engineering Research Center since September 2017.

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HIGHLIGHT:

――未来において、デザイナーが果たすべき役割とは何でしょうか?

マイルス:企業の中にいるデザイナーが、企業の意思決定に関わる役割を果たすようになることだと思います。つまり、デザイナーが取締役会に出席するような存在になるということです。
たとえば、あなたが製造業に関わる企業を経営していたとして、洗練されたデザインがビジネスの成否を左右する局面に出くわしたとしましょう。その企業の取締役会のテーブルにデザイナーが居なかったら、困りますよね? 

ごく一部の企業では、デザイナーは Chief Design Officer という役職に就任し、取締役会レベルで意思決定に関わっていますが、こうした動きがより活発化すべきだと考えています。また日本では、デザイナーが企業内で意思決定者層にいることは非常に珍しいことだと思います。

――どうしてデザイナーはこれまで意思決定に関わる役割を、企業、さらには産業界で担うことができなかったのでしょう?

マイルス:ひとつは私たちのようなデザインコミュニティの責任です。デザインの地位を高めることに成功してきたとは言えないと思います。なぜならデザインは、いわゆる企業戦略における最重要事項として、まだまだ認識されていないからです。状況は変わりつつありますが、もっと急速に変化していくべきだと私たちは考えています。 

また、私は教育にも問題があると考えています。歴史的に見ても、デザインがアカデミアにおいて高い地位の科目であったことはありません。この地位を高めるためには、より優秀な人々がこの分野に流入することが必要です。 

これらの状況を打開するため、企業や社会において、重要な意思決定に関わるデザイナーがより多く生まれていく必要がある。そうして、この分野をより野心的なものにすることが求められます。しかしこれがデザイナーには非常にチャレンジングなことなのです。
デザイナーはつくることを愛するものです。自分の手で、プロダクトやサービスをつくりたいわけです。しかしマネジャーやディレクターなどの高い地位の役職に就くと、それができなくなりますよね? デザイナーの「デザインする」ことへの愛が、企業や産業界といった広い視野で自分のクリエイティビティを捉え、それらに影響を与え、自らの地位向上を図るための戦略的な機会を得ていくことを阻害してしまうのです。まったく皮肉な現実ですね。 

今後は政府の機能中枢にもデザイナーが求められるべきだと私は考えています。洗練されたデザインの考え方を持たない政府が、良い政治を生み出すことが想像できないからです。政策立案などのプロセスの中で、デザインの原理に基づいたクリエイティブなプロトタイピング、テスト、そして人間中心のアプローチが用いられることは重要なことだと考えています。