Charting Culture

前にどこかで、人はなぜ移動することに快感を覚えるのかについて書かれた記事を読んだことがある。残念ながらその帰結を覚えていないのだが、人類の歴史は移動そのものである点から、その理由は明らかであるように思える。

この地図は、歴史学者と科学者のチームが、文化の流動性をマッピングしたいと考えてつくりあげたものだ。紀元前600年から現代に至るまでの、著名人の誕生地と死亡した場所をアニメーションでマッピングしている。それにはイスラエルの王ダビデやレオナルド・ダ・ヴィンチなども含まれている。情報源はGoogleが所有するFreebaseという有名な人物や場所のデータベースが使われている。ビジュアライゼーションは、Maximilian Schich(テキサス大学ダラス校)とMauro Martino(IBM)によるもの。

この地図につけられた名前は「Charting Culture(文化を描く)」というもの。情報を文字にすると文章になるが、地図というのは、情報を線にしたものなのだ。つまり、文章と地図というものは似ている。どちらも、記述することによって「picture(ものの見方)」を提示することができる点で。


今日のテーマは「移動」なんだけど、アイデアというのは地理的な制約を受けない。つまり、アイデアが何万キロという距離を旅したとしても、壮絶に疲れたりなんかはしないということだ。これは、お金というものを放っておいても腐らない原理と少し似ている。そしてインターネットというのは、アイデアの移動を高速化したという点が一番大きい。その結果として、地球全体で共有した文化的なミームを持つようにもなった。そうした観点から地図「Charting Culture」を見てみても面白い。

今日はイタリアのとある研究機関に自分の記事をピッチすることから始まった。僕が今年に書いた修士論文、「2020-2021年のインフォデミックにおけるサイエンスジャーナリズムの可能性と課題」を、英語の記事としてパブリッシュしたいということでオファーが来たのだった。オファーをしてくれたのは、僕がその論文でインタビューをしたサイエンスジャーナリストであり、NY Timesなどにも寄稿をしてきた経歴を持つ人物だった。こうしたオファーをもらえるのはとてもありがたいし、何より、こちらから突然メールでインタビューさせて欲しいと連絡をし、応じてくれたことから、こうしたことが起きているというのも面白い。

マーティンという名で、研究書などの老舗出版社であるRoutledgeから『Science Journalism An Introduction』という本を出している。

修士論文を書いていたとき、「そもそも、サイエンスジャーナリズムの教科書のような本を書いている人って、どんな人なんだろう?」と思って、amazonで「Science Journalism 」と検索したところ、上記の本が1位にヒットした。すぐに読んで連絡を取ってみたところ、彼は快くインタビューに応じてくれた。まさか応じてくれるとは思っていなかったので、インタビューはとても楽しい機会になった。

彼の本には記事のピッチ(提案)の方法についても非常に詳しく書かれている。その中で面白かったのは、編集者がどんな視点でピッチを読んでいるかだった。たとえば編集者は、長いピッチを読んだときに何を思うかというと「この人物は、自分の書きたいことがわかっていない」と判断しているのだという。

文章に限ったことではなく、ひとは完全に理解しているものはいくらでも簡素化できる。しかし理解できていない場合、どうしても長文になる。そうした長文は書きながら考えて分かったことにしている場合がほとんどだ。編集者はそこを見ていて、端的に主題が述べられているかを考察しているのだという。

それに端的に述べると、その人物がベースとしている考え方もよく分かる。誰にでもわかるような平易で安易な言葉にする人は、大衆的なわかりやすさ、つまりはポピュリズム的な立ち位置をとる。言葉で概念の範囲を規定するように書く人は、アカデミズム的だと言えるし、扇動的な人はアクティビズム的だ。自分がどのような主義を持っているかを能動的に知っているひともいれば、知らない人もいるだろうけれど。このあたりは書き出すと長くなるのでまた。

以下がピッチ内容だ。ピッチは、アイデアを移動させるためのチケットのようなものだ。書き上げるのには時間がかかるが、一度書き上げたら、自分の中で何かが「進む」。そして次はそこから新しい旅を始められる。

さて、このピッチが無事に進んでくれることを祈る。(英語を機械翻訳しただけなので、訳出が変なところは多い)

【概要】

インフォデミックとは、2020年から2021年にかけてのパンデミックのデータ化された「鏡の世界」のことである。情報はウイルスのように拡散し、世界の人々を大きく誤情報に感染させて混乱させている。今回のパンデミックを教訓に、今後のパンデミックをどのように防ぐのか。本稿では,科学ジャーナリズムがインフォデミックにおいて重要な役割を果たしているという考えに基づき,BBC,WIRED,Neue Zürcher Zeitung,ZEIT Online,独立系出版社Delayed Gratificationなど,インフォデミックにおいて重要な役割を果たしている科学ジャーナリストへの一連のインタビュー調査から,今後の科学ジャーナリズムのあり方についての洞察を示す。さらに、この記事は、メディアスケープにおける現在のパラダイムシフト、すなわち、メディア効果パラダイムからメディア化パラダイムへの転換に光を当てる。インフォデミックは、私たちのメディアスケープがどのように構成されているか、ジャーナリズムの達成と限界、そしてジャーナリズムと市民の今後の関わりを示している。

【背景】

本論文のユニークな点は、科学ジャーナリストへの一連の専門家インタビューにより、インフォデミックからの教訓を抽出するとともに、新たなメディア理論である「メディア化理論」をインフォデミック下の科学ジャーナリズムに関連付ける試みにある。メディア化理論を政治や科学などのジャーナリズムに関連づける先行研究はあるが、メディア化理論をインフォデミック下の科学ジャーナリズムに適用し、メディア化の弊害を検討する試みはこれまでにない。

【著者の経歴】

森旭彦は、新興科学技術と社会の学際性を専門とする科学ジャーナリスト。ジャーナリストであると同時に、メディア理論をジャーナリズム活動に応用する実践的なメディア研究者でもある。ロンドン芸術大学でメディア研究の修士号を取得。WIRED』日本版、BBC(プロデューサー)などに作品が掲載されている。

【要旨】

* パンデミックは、必然的に、そして皮肉にも、科学ニュースを社会により魅力的なものにする機会を提供します。WIRED』や『Atlantic』などで活躍する科学ジャーナリストRoxanne Khamsi氏へのインタビューでは、パンデミックの中で科学記事を最優先のニュースにするために、どのようなストーリーテリングが必要かを明らかにしています。

* パンデミックは、BBCのような世界的なニュースメディアにおいて、長期的な情報を提供する長期的な視点の重要性を示す機会でもあります。BBCの編集者であり科学ジャーナリストでもあるリチャード・フィッシャー氏へのインタビューでは、マスメディアのコミュニケーションにおいて長期的な視点を育むことの難しさと課題が示されています。

* インフォデミックは、科学ジャーナリストが直面する潜在的なコストとリスク、特にその膨大な研究作業量と誤報拡散者による信用失墜を示しています。また、科学ジャーナリストのマーティン・W・アングラー氏へのインタビューでは、科学ジャーナリストがどのように誤報と戦っているのかが実践的に紹介されています。

* スロージャーナリズムは、長く続く情報と深い研究を伴うジャーナリズムの実践として、情報源として、また「健康的な食事」として、徐々に認知されてきています。スロージャーナリズム雑誌『Delayed Gratification』の創刊者であり、編集者でもあるマーカス・ウェブ氏へのインタビューでは、ジャーナリズムの未来を鋭く洞察しています。

* メディア研究から、メディアスケープのパラダイムシフトを示す。Infodemicは、現在のメディアスケープが、メディア効果のパラダイムからメディア化のパラダイムへと移行していることを示している。このパラダイムシフトは、ジャーナリズムとソーシャルメディアの間に技術的な非対称性をもたらす。この変化により、ジャーナリズムはその実践を変えなければならない。

On the map森 旭彦diary